がん患者さんとご家族の
ための生活情報番組

がんと生きる

第2回もしもがんと言われたら①~心のこと、生活の変化

――がんと闘う患者さんと、そのご家族のための生活情報番組『がんと生きる』。
この番組は、がんと診断された方、治療に取り組んでいらっしゃる患者さん、患者さんを支える家族の方に向けて、生活の助けとなる様々な情報をお届けしていきます。
お話を伺うのは、国立がん研究センター東病院 がん相談支援センターのがん専門相談員の坂本はと恵さんです。

坂本:よろしくお願いします。

◆がんと診断され頭の中が真っ白に……
――今回は、もしもがんと言われた時に、診断されたご本人の心に次々と浮かんでくる疑問や不安について、坂本さんにお聞きしていきます。
がんと診断されたのが、どのようなプロフィールの方なのか具体的な方が、答えも具体的になるかと思いますので、次のように設定します。

男性、40代、会社員、既婚。
家族構成…妻、子ども2人(中学生と小学生)
本人の年収…約600万円、妻の年収…約100万円(パート)

働き盛りで子育て中の男性が胃がんと診断されました。40代の男性ががんに罹る場合、消化器系(胃、大腸、肝臓)のがんは高い比率を占めています。
実際にがんと診断されたとき、真っ先に頭に浮かぶのは、こんなことではないでしょうか。

「がんと告知されて、頭の中が真っ白になってしまった。一体どうしたらいいんだろう」

自身の体はもちろん、仕事や家族、お金、日常生活など、様々な不安が一気に押し寄せて、まさに頭の中が真っ白になってしまうのではないかと想像しますが、実際にそのような相談を受けた場合、どのように答えていますか?

坂本:頭の中が真っ白になってしまいました、という言葉は本当によくお聞きする言葉で、「何から手を付けたらいいのかわからない」という主旨の相談もたいへん多いです。
そうした際に必ずお話をしているのが、しかるべき検査を受けてきちんと診断がつかないと治療計画が立たないため、そこまでは待つ必要があります。その待っている間に出来ることを一つずつ考えていきましょう、ということです。
例えば、高額療養費制度の限度額適用認定証を(健康保険組合や国民健康保険から)取り寄せておくことや、ゆくゆくセカンドオピニオンを受けたいと考えているなら他の病院を検索しておくことなどをお勧めしています。


◆あわてて重大な決断は禁物。自分の気持ちを人に話して心を落ち着ける
また、あわてて決めない、ということもとても大事です。
がん告知を受けて、やはり頭が真っ白になってしまい、社会復帰も難しいと考えて仕事を辞めてしまう方がいますが、辞めてしまうと同じ会社に戻るのはなかなか難しいので、まずはあわてずに、大きな決断をしないことを念押ししています。
精神腫瘍科の医師によると、人は(がんの診断など)重大な話を受けると、数日~2週間ほどの間は、気持ちの落ち込みが非常に大きく出ることが判ってきています。逆に、その時期を過ぎると、多くの人は気持ちが回復してくることも判ってきているので、診断を受けてから当面の間は重大な決断をせずに、まずやれる事を淡々とやることをお勧めしています。
「他の方はどうしていますか」という相談を受けた場合には、できるだけいつもどおりの生活を送ってください、とお伝えしています。

そして可能なら、自分にとって話しやすい相手に、自分の気持ちを聞いてもらうことも大事ですよ、という話もしています。自分の気持ちを言葉に出すことは、不安の解消に有効だと精神科の医師も言っていますので、もし話せる相手が身近にいなかったり、家族など身近な人に話すのはかえってつらいと感じる方は、がん相談支援センターにお越しください。家族に話すということが、かえって患者さんなりに家族が心配ということもあるので、絶対に身近な人に話さなければならないと思わなくても大丈夫です。
また、気持ちの落ち込みが長く(数週間以上)続く場合には、各病院の精神腫瘍科などを受診することもお勧めしています。

――他の人に話をするのが苦手な人や、身近に話せる人がいない場合、日記やメモのような形で、書くことも効果があるでしょうか?

坂本:それも良いと言われていますよね。
自分の気持ちを、言葉に出したり書き出したりして、いったん自分の身体から出すことで、ちょっと客観的になれるという効果もありますので、そのようなことをするのも一つの方法だと思います。
また、全国各地に患者会があって、患者さん同士で交流を図ることもできます。どこかに集まって話し合うところもあれば、SNSを使って交流している患者会もあるので、そういう場所を上手く活用して、先輩の患者さんたちがどういう風にこの辛い時期を乗り切ったかを知るのも、自身の今後の療養生活にとても役立つと思います。


◆主治医への質問はあらかじめ整理して診察室へ
――がんと診断されて、これから治療をしていくわけですが、自身の生活がどう変わるのかということが、気になる事の一つ目だと思います。
それに先立って重要になるのが、ステージ1や3A、3Bといった、がんの進行度だと思いますが、これはどのようなものですか?

坂本:がんの病期を決めるのには、3つの観点があります。基本的には、がんの深さの程度(深達度)。そしてリンパ節への転移の有無。3つ目が遠くの臓器への転移、例えば胃がんの人なら胃以外の離れた場所に転移があるかどうかという観点から判断して、ステージ、つまり病期が決まります。それに伴って治療の内容も変わってきます。

――最近は手術の方法も変わってきていて、かつて重い方とされていたステージと診断されても、手術後すぐに退院すると聞きますが、そんなに早く退院してしまって、普通の生活に戻れるものですか?

坂本:手術の内容にもよりますが、退院したら即、普通の生活、つまり手術前の生活に戻るかというと、それはちょっと違うかもしれないですね。
例えば、私が勤務している国立がんセンター東病院では、入院期間が平均12日ほどで退院しますが、食生活に変化が出たり、再発予防のための抗がん剤治療をすることになって、退院後しばらく病院に通い続けることもあります。

――治療生活が始まるということですね。ただ、治療生活のイメージがつきません。
自分は何がわからないのか、誰に聞けばいいのか、わからないことばかりですが、まず誰に何を聞けばいいのでしょうか。

坂本:患者さんの体のことを一番知っているのは主治医ですから、体のことや治療の見通しについては、主治医の先生に聞くのが一番です。
ただ、医師というのはものすごく忙しいので、外来でゆっくり話すのが難しいこともありますし、先生から聞かれてもいないことをこちらから質問しても良いものか判らないという患者さんもたくさんいますので、私たちは診察室での一工夫をお勧めしています。
あらかじめ聞きたい事を整理しておいて、診察室に入る前に外来の看護師さん経由で情報伝達をしてもらいます。看護師さんに伝えるのが難しい場合は、診察に入った時に「先生、今日いくつか質問があるんですが大丈夫ですか」と言いながら診察を始めるという工夫です。

――お医者さん以外には、どんな方に話を聞けますか。

坂本:自分の通っている病院では、どのような段取りで質問の時間を取ってもらえるか、とか、これから自分が受ける治療についてどんな質問をしたら良いか、といったコミュニケーションの整理などは、私たち、がん相談支援センターの相談員もお手伝いしていますので、ぜひ活用してください。


◆治療中の筋力低下に要注意!毎日2~3000歩を目安に意識的に運動を
――治療生活に入ると、体力が落ちて、これまで普通にやっていた事が出来なくなるのではないかと不安です。

坂本:治療の内容にもよりますが、がんと診断されたから必ず体力が落ちるということではないんです。むしろ懸念しているのは、がんと診断されたことで、無理をしない方がいいと思うがあまりに、まったく家から出なくなってしまうということです。治療とは直接関係がないのに、筋力が低下して、結果的に体力が落ちる方は非常に多いです。
医師やリハビリテーションのスタッフなどは、治療前も治療後も、週3~4日は2~30分の運動をすることを推奨しています。
筋力が低下しないよう、手術の翌日くらいから、できるだけ動くことを勧めている時代ですし、退院後も1日2~3000歩は歩くことで、倦怠感の軽減や予防になることが判ってきていますので、意識して動くようにしてください。
男性の方であれば、奥様のお買い物に付き合うのも良いでしょう。スーパーの中を1周するだけでもあっという間に20分くらい経ちますので、ご家族の日常にちょっと参加するというような工夫でもいいと思います。


◆抗がん剤の副作用による外見の変化……まずはがん相談支援センターに相談
――次に、抗がん剤治療をする事になったとします。抗がん剤を投与すると髪が抜けるというイメージがありますが、実際はどうでしょうか。

坂本:かなりそのイメージは強いと思いますが、どの抗がん剤でも必ず髪の毛が抜けるわけではなく、薬によっては抜けないものもあります。
とはいえ、見た目が変わるというのは、やはり社会生活に影響を与えますので、治療の方針や方法を聞いた際に、どんな副作用が出るのか確認しましょう。もし脱毛するということなら、早めに備えておくということも大事です。
また、抗がん剤によっては、爪の色が変化したり、爪が弱くなって割れやすくなったり、皮膚障害といって吹き出物のようなものが出てしまうというものもあります。

――爪や肌についてなど、誰に相談すると良いですか?

坂本:病院によって相談の窓口が違うことがありますので、その病院では誰が、そういったことに詳しいのかを、まず、がん相談支援センターに聞くと良いです。
相談支援センターで外見のケアをサポートしている病院もありますし、抗がん剤を取り扱っている通院治療センターの看護師がすごく長けているという場合もあります。
病院によってはアピアランスセンターといって、外見の変化をサポートする専門の部署を設けている所もありますので、誰に聞くと一番適切な情報が得られるのか、まずは相談支援センターに聞いてみてください。

――がん相談支援センターで、誰に聞けばいいかを教えてくれる、ということですね。


国立がん研究センター東病院 がん相談支援センター がん専門相談員の坂本はと恵さん

国立がん研究センター東病院 がん相談支援センター がん専門相談員の坂本はと恵さん



――今回お聞きした以外にも、家族や仕事、お金についてなど、知りたいことがたくさんありますので、次回以降もテーマを決めながら聞いていきたいと思います。

がんと闘う患者さんと、そのご家族のための生活情報番組『がんと生きる』。
今回は、もしもがんと診断されたらというテーマで、自分自身の心の持ち方についてや、治療生活について、国立がん研究センター東病院 がん相談支援センターの坂本はと恵さんにお話をお伺いしました。
また、番組ではお聞きいただいているあなたからのご意見やご感想、ご質問などを募集しています。
次回は、治療などについてお医者さんとどんな話をしたらいいのか、がんについての情報の集め方などについてお聞きしたいと思います。坂本さん、次回もよろしくお願いします。

坂本:よろしくお願いします。

がんと生きるTOPに戻る
がんと生きるページトップスクロール